
【プロセス編】パーパスを「絵に描いた餅」にしない、巻き込みの技術
「共感100%」を追わない、戦略的プロセス設計
前述のコラムでは、パーパスを「他人事」にしないために、何を言語化すべきかという「内容(コンテンツ)」の重要性についてお伝えしました。抽象的な理想ではなく、自社の「強みのエビデンス」や「解決すべき課題」をセットで定義することが、駆動(ドリブン)の鍵となります。
しかし、どれほど解像度の高い言葉を紡いでも、それだけで組織が動き出すわけではありません。言語化された「内容」を、組織の隅々にまで浸透させ、血肉化させるためには、「いかにして作ったか」というプロセスが極めて重要になります。
いわば「内容」がエンジンの性能であれば、「プロセス」はエンジンを回すためのエネルギーを生み出す仕組みです。今回は、DAIALEC(ダイアレック)が大切にしている「現場の実態を置き去りにしない、戦略的な巻き込みの技術」について解説します。
1. なぜ、手間をかけてまで社員を巻き込むのか?
私たちはパーパス策定において、経営陣だけで完結させず、社員をできる限り巻き込むプロセスを大切にしています。これには、前回お伝えした「言語化の精度」を高めるという意味も含め、大きく2つの理由があります。
① 「事実実態」と乖離させないため
パーパスは、対外的なPR文句ではなく、自社の「社会における存在意義」です。ブランディングが「自社の思い」と「顧客の認知」の一致で成り立つように、パーパスもまた「定義された言葉」と「社員の日々の行動」が一致していなければなりません。現場を巻き込み、リアルな手応えや「らしさ」を丁寧に吸い上げるプロセスこそが、前号で触れた「強みのエビデンス」の解像度を高め、現場から信頼される言葉を作る唯一の道なのです。
② 「当事者意識」というエンジンを積むため
「知らないところで勝手に決まった言葉」に、人は命を吹き込みません。作成プロセスに関与し、「自分の意見が反映された」「自社の未来を自分たちで考えた」という実感が、後の駆動(ドリブン)フェーズにおける強力な推進力になります。
2. DAIALEC流・パーパス策定の基本形
会社の実態に応じて巻き込みの濃淡は調整しますが、基本的には以下の3つのステップで進めます。
STEP1:全体設計と告知(1〜3か月)
目的の明確化と現状把握を行い、組織の実態に応じた最適な(巻き込みの仕方を含めた)活動全体を設計。また、全社に向けて「なぜ今、これに取り組むのか」を丁寧に告知します。
STEP2:素材収集と言語化(3か月〜半年)
アンケートや対話・ワークショップ(WS)を通じて、現場に眠る「強み」や「違和感」「想い」などを吸い上げます。メンバーを限定する場合でも、全社員が意見を出せるフローを確保し、プロセスをブラックボックス化させないことが肝要です。
STEP3:プロジェクト(PJ)化
言語化されたパーパスと課題をベースに、具体的な組織変革のPJを立ち上げます。
3. 「全員一律」の罠と、戦略的なゴール設定
ここで多くのリーダーが悩むのが、「どこまで、誰を巻き込むべきか?」という判断です。全員を深く巻き込めば負荷が高まり、限定すれば当事者意識が育たない。このジレンマを解消するのが、DAIALEC(ダイアレック)の「2→6アプローチ」です。
組織の状態は、よく「腸内環境」に例えられます。
2割の善玉菌(ポジティブ層): 変化を喜び、自律的に動く。
6割の日和見菌(中間層): 様子を見ている。
2割の悪玉菌(ネガティブ層): 批判的、または固執。
腸内環境をよくする本質は、悪玉菌をゼロにして滅ぼすことではありません。2割の善玉菌を活性化させることで、6割の日和見菌を「善玉化」させ、全体のバランスを良い方向へ導くことにあります。
組織もこれと全く同じです。全員を一度に変えようとするのではなく、まずは起点を動かす。そのため、パーパス策定においても、初期段階から「社員100%の共感」を目指すのは非効率であり、現実的ではありません。私たちのゴール設定は、「理解はほぼ100%、共感は20%」をまずは目指す、というものです。
4. 2割を起点に組織を動かす「2→6アプローチ」
浸透を飛躍的に進める鍵は、ネガティブな2割を説得することに時間を費やすのではなく、「ポジティブな2割」にリソースを集中させ、具体的な実績を作ることにあります。
①2割(善玉)と動く: まずは共感した2割の社員と共に、パーパスに沿った新しい行動を起こします。
↓
②実績を示す: その活動によって「お客様に喜ばれた」「業績が向上した」という事実を作ります。
↓
③6割(日和見)が動く: その成功を目の当たりにした中間層の6割が「この方向で良いんだ」と実感し、追随し始めます。
(よく言われる、組織風土変革はこの段階が変革の起点となります。)
なお、ネガティブな2割を排除する必要はありません。組織において「健全な批判層」は、パーパスが独りよがりな理想に走っていないかを問い直す貴重な機能として捉えます。
5. ターゲットに合わせた「かかわり」のデザイン
ゴールを「理解・納得・共感」の3段階で整理すると、打ち手はより効果的になります。
「理解」してもらうがゴールなら(EX.社員全員を対象):
事実を正確に伝える「伝達」が中心。全体会議や社内報など。
「納得」してもらうがゴールなら(EX.管理職を対象):
背景や温度感を伝える「丁寧な説明」が必要。
「共感」してもらうがゴールなら(EX.コアとなる2割を対象):
双方向でじっくり考える「対話の時間」を優先的に配分する。
このように、ゴール設定をあらかじめ明確にすることで、限られたリソースを最も効果的なターゲット(未来の起点となる2割)に集中させることができるのです。
終わりに:パーパスは「動きながら」浸透していく
パーパスにおいて、「優れた内容(コンテンツ)」と「納得感のあるプロセス」は車の両輪です。精緻に言語化された言葉を、信頼できるプロセスで届ける。この両方が揃って初めて、組織は自律的な進化を始めます。
「いかにして、最初の2割の火を灯すか」。
DAIALEC(ダイアレック)は、戦略的なプロセス設計から現場の実践支援まで、リアリティを持って伴走します。
MVVやパーパスの策定に課題がある、策定しても機能しないと感じている経営者・担当者の方に。
パーパスの設定と組織の自律的なドリブンまで、その「設計から実践」までをサポートする「パーパスドリブン コンサルティング」
DAIALECは社員が会社や仕事に意味や価値を感じられるパーパスを社員と一緒に作り、具体的な実践までをご支援します。
DAIALECのパーパス実践ネットワーク
DAIALECは、組織開発のノウハウや多様な専門家のネットワークでパーパスドリブンを実現します。
組織風土コンサルティングのスコラ・コンサルトの元代表取締役が立ち上げたDAIALEC。
組織開発のコンサルティングをはじめ、各種経営者のコーチ、対話・ファシリテーターなどの豊富な経験・ナレッジを持っています。
また、大手広告会社との提携し、パーパスドリブンに必要となるクリエイティブ制作や社内外の広報についてもワンストップで対応。
その他にもシステム、人事制度、マーケティング、それに伴うPJマネジメントを得意とするコンサルタントをネットワークしています。




