目次
1. パーパスとは?
3. 事業面におけるパーパス
4. 組織面におけるパーパス
パーパスとは?
仕事柄、パーパスやパーパス経営に取り組むとはなにか?について書かれている記事を見させていただく機会が多くなりました。
そこには、下記の様な説明をされていることをよく目にします。
・パーパスとは、会社の目的、存在意義。社会的存在意義。
・会社の存在意義実現にむけて、組織や仕事を動かしていくこと。進化させていくこと。
・ステークホルダーや、社員のエンゲージメント向上に効果をもたらす。
この説明はまったくその通りであると思います。
会社が刹那的な営利だけを目的とせず、「なんのために存在し、顧客や社会に何の価値を提供するのか?」に真摯に向き合い行動を起こす。その価値に応じた適切な売上や利益をあげていく。
このような考え方のパーパスが広がって多くの会社の当たり前になれば、会社という存在は、社会やそこで働く多くの社員や関係者にとって、もっともっと豊かなものになっていくことでしょう。
しかし、長年パーパスにかかわってきた立場、また、個人的にも、このようなパーパス経営を多くの会社で実践していただきたいと願う立場としては、この説明だけを見て「パーパス」は素晴らしいから取り組もうとなってしまうのは危険だと感じています。
パーパスが絵に書いた餅で終わり、パーパスづくりに関わった多くの人に失望がうまれるような気がしているからです。
パーパスを戦略レベルで実現するパーパス経営
もし、パーパスを絵に書いた餅を作る取り組みではなく、パーパス経営という言葉にあるように経営戦略レベルで真剣に取り組もうと考えるのであれば、パーパスを綺麗で抽象的な理想像でとらえるのではなく、それを本当に実現するためには「何をしなければならないのか?」「どのようなリスクがあるのか?」といった実践のリアリティもしっかりと考えておく必要があると思います。
さらに、事業面の視点だけではなく、少なくとも組織面の視点からも「何をしなければならないのか?」「どのようなリスクがあるのか?」も考えておく必要があるでしょう。いかによい事業戦略を描けたとしても、その成否はロジスティックス、つまり実現する組織が正しく機能していなければ意味がないからです。

ということで、上述の視点も踏まえ、改めて、パーパス経営に取り組むとはどういうことなのか?何を変えていく必要があるのか?についてお話したいと思います。
なお、「何を変えていくのか?」について書かれている記事はあまり見たことがないので、一般的な意見も踏まえてというより、私の今までの経営者として、またコンサルタントとしての実践経験からの見解としてお話したいと思います。
事業面におけるパーパス
事業面での目指す会社の理想の状態は、前述の説明にもあるように「会社の存在意義を定め、会社はその実現のために事業を営んでいる」ということだと思います。
ただ、「存在意義を軸に事業を営む」を、もう少しリアリティのある言葉に直せば「会社の存在意義と遠い事業からリソースを引き上げ、存在意義に当てはまる事業に経営資源を集中させていく」ということになるでしょう。
今まで、「儲かるから、今までやっていたから、他社が先行しているから」など、現状維持強化や、短期的な利益が獲得できるかを経営資源投入の判断軸としてこられた会社であれば、そこから「会社の存在意義にそった事業であるかどうか」を判断軸に、経営資源を集中していく経営スタイルへ転換していくことを意味します。
当然リスクもあります。
社内の既得権を打破しリソース配分を変えることは簡単なことではありません。また、他社先行事例など実績・エビデンスのある事業への投資ではない場合、経営はその投資に対する説明責任はもちろん、うまくいかなかった場合の経営責任を問われることになるかもしれません。パーパス経営に取り組むとは、まさに、実践レベルでは、そういうリスクにも向き合うことを意味します。
ただ、リスクについては、なにがリスクかを正しく理解してさえいれば、適切に対応できると考えます(たとえば、私たちが提案するような、リスクの幅を組織の許容範囲のなかでマネジメントするリスクマネジメントの考え方などもご活用いただけると思います)し、そもそも、環境変化の激しい時代に、現状維持や他社事例の追随は、経営にとっては社内リスクや短期リスクを軽減することにはなったとしても、会社には対外リスクや長期リスクをもたらすことになるのではないか?という視点でも考えていただければと思います。
組織面におけるパーパス
では、一方で組織面としては、いったい何に取り組むことなのでしょうか?
まず、目指す姿はなにか?
そのことを考える材料として、パーパスが、ビジネス界で語られた始めた背景や経緯、課題を踏まえるとわかりやすいのではないかと思います。
VUCAと呼ばれる時代、正解が見えなくなっている時代、社員一人一人が自律して考え試行錯誤しながら正解を模索することの重要性が語られるようになりました。そういう時代において、会社の目指す方向に社員が共感できることの重要性が認識されるなかで、注目を浴び始めたのがパーパスです。
つまり、「パーパスにむけて自律的に考え行動をおこしていく組織」がパーパスに取り組む組織面の理想の状態となるでしょう。
では、どうやって、その理想にたどり着くのか?何に取り組めば実現できるのか? リスクは何か?
その答えは、現時点の組織がどういう実態にあるか?によってさまざまだと思いますが、私の経験上、パーパスの理想実現に向けて向き合わなければならない一番大きな課題は「マネジメントスタイルの転換」であろうと思います。
具体的には、上司による指示管理型のマネジメントスタイルから、パーパスにむけた共感支援型のマネジメントスタイルへの転換。
下記のような変化が望まれます。
・外圧的なパワーで社員を働かせるのではなく、共感から生まれる内発的な力で働いてもらうようなマネジメント。
・詳細な指示や管理・評価をするマネジメントより、仕事の意味や価値、パーパスとの関係などの説明責任を果たすマネジメント。
・リーダーシップによる率先垂範だけではなく、フォロアーシップによる自律的なチャレンジへのサポート・環境支援。
など。
たとえ会社が定めたパーパスに社員が共感し日常の仕事を変えていきたいと心から思っていたとしても、一方で、日々、上司から与えられた仕事を淡々とこなすことだけを求められていたとすれば、結果、パーパスを判断軸とした自律的な仕事など実現しません。上司の指示を軸にした仕事の仕方が変わらないからです。
パーパスにむけて自律的に働く組織をつくるためには、このようなマネジメントスタイルの転換がもとめられるのです。
しかし、リスクもあります。「変わりなさい」では当然変われないもの。いままで多くの企業で、その失敗事例を見てきました。指示管理型で成功してきたマネジメント層に、突然会社が指示管理型をやめなさいと言ったとしても、簡単に変わるものではないのです。
残念なことに、その多くが、指示管理に代わるマネジメントの仕方がわからず、結果、共感支援どころか、リスクを恐れて関わらないといった放置型のマネジメントになっているといった現実もあります。現場は混沌とし、部下は上司の依頼を聞かず、生産性はあがるどころか、どんどんと下がってしまう。

このようなリスクに対応するためには、「変わりなさい」という精神論ではなく「変わるためには何が必要か」といった現場レベルでの具体的取り組みまで考え丁寧にサポート“しつづけていく”必要があるでしょう。もちろん、具体的に取り組む手段として提案できるものはいくつもありますが(また別の機会で触れたいと思います)、一番は“しつづける”その本気度をマネジメント層が感じられるかがポイントではないかと思います。
あらためて。
パーパスとはなにか?パーパス経営に取り組むとはなにか?
事業:「儲かるから、今までやっていたから、を軸に経営資源を投入する」ではなく「パーパスを軸に経営資源を集中する」へ
組織:「社員を管理・指示命令で動かすマネジメントスタイル」ではなく「社員が自律的に取り組むことを支援する共感支援型のマネジメントスタイル」へ
パーパス策定の一歩目がなかなか出ないに、策定したパーパスが正しいのかどうかわからない、など不安を感じている経営者・担当者の方に。
パーパスの設定と組織の自律的なドリブンまで、その「設計から実践」までをサポートする「パーパスドリブン コンサルティング」
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